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農地転用の許可基準①立地基準

どんな農地であっても農地転用ができるというわけではありません。

農地法に定められた基準を満たした農地だけが農地転用の許可を得ることができます。

なぜなら、農地法によって農地は、国の農業生産の基盤であって、国民のための限られた資源であり、乱開発のリスクから保護すべき対象とされているからです。

農地転用の許可基準は2つ存在する

では、どのような基準が定められているのでしょうか?

農地法は次の2つの基準を定めています。

  1. 立地基準
  2. 一般基準

ここでは、立地基準について説明していきます。

農地転用の許可基準② 一般基準

立地基準とは

立地基準とは、農地転用の予定地がどのような営農状況にあるのか、その農地周辺の市街地化の状況(開発の度合い)はどの程度なのかに応じて農地を5つに区分し、それぞれの区分に従って許可要件を定めたものです。

つまり、対象農地がどこに位置して、周囲がどのような状況なのか(大規模な農地に囲まれている・住宅地が広がっている・幹線道路が通っているなどの状況)によって農地を5種類に区分して、許可・不許可を判断するということです。

したがって、農地の区分よって農地転用が可能なのか、それとも不可能なのか、または容易なのか難しいのかが変わってくるということです。

立地基準 5つの区分

立地基準は以下の5つに区分されています。

  1. 農用地区域内農地
  2. 第一種農地
  3. 甲種農地
  4. 第二種農地
  5. 第三種農地

このうち、農用地区域内農地・第一種農地・甲種農地は原則として農地転用はできません。

それに対し、第二種農地と第三種農地は農地転用が可能です。

農用地区域内農地

農用地区域内農地とは、市町村が農業振興地域の整備に関する法律(農振法)に基づいて作成した農業振興地域整備計画において、農用地区域として定められた地域の中に存在する農地のことです。

いわゆる「青地」の農地のことです。

農用地区域は、農地として利用すべき区域であると行政によって指定されていますので、原則として農地転用は不可能です。

しかし、農振法に定められた厳しい条件を満たすことができれば、例外として農地転用が認められる場合があります。

この時、農地転用をするためには、あらかじめ農用地区域からの除外(農振除外)をしておく必要があります。そして、農用地からの除外が完了してから改めて農地転用の許可申請をすることになります。

第一種農地

第一種農地とは、集団的に存在し、良好な営農条件を備えている農地のことをいいます。

具体的には、次のような条件を備えた農地のことです。

  1. 概ね10ヘクタール(10万㎡)以上の規模のまとまった大きな農地の区域内に存在する
  2. 特定土地改良事業等の施工区域内にある農地である
  3. 傾斜、土の性質その他の事前状況から見て、周囲の農地を超える生産が見込める農地である

第一種農地は、良好な営農条件を備えていることから、農用地区域内農地と同様、原則として農地転用はできません。

しかし、例外として農業用の施設や公共性の高い事業については、農地転用が認められる場合があります。

甲種農地

甲種農地とは、第一種農地のうち市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備えている農地のことです。

具体的には、次のような条件を備えた農地のことです。

  1. 概ね10ヘクタール(10万㎡)以上の規模のまとまった大きな農地の区域内に存在する
  2. その面積、形状その他の条件が農作業を効率的に行うのに適しており、大型の農業機械が利用可能な農地で、土地改良事業が行われてから8年以内であるもの

甲種農地も第一種農地と同様、特に良好な営農条件を備えていることから、原則として農地転用はできません。

しかし、例外的に農業用施設や公共性の高い事業においては、農地転用が許可される場合があります。

第三種農地

順番が逆になりますが、第二種農地を説明するためには第三種農地を先に説明しておくとわかりやすいので、敢えて第三種農地から説明することにします。

第三種農地とは市街化の傾向が著しい区域内にある農地のことで、具体的に次のような区域内にある農地のことをいいます。

  1. 道路や下水道、駅などのような公共設備・施設の整備が一定の程度に達している区域(概ね300メートル以内に市役所がある など)
  2. 宅地化の状況が一定の程度に達している区域(街区の面積に占める宅地の面積が40%を超えている など)

第三種農地は、農地転用が可能です。

第二種農地

第二種農地とは、第三種に近接する区域その他市街化が見込まれる区域内の農地のことです。

具体的には次のような条件を備えた農地のことです。

  1. 道路や下水道。駅などの公共設備・施設の整備が、第三種農地程度に見込まれる区域内の農地である(概ね500メートル以内に市役所がある など)
  2. 宅地化の状況が、第三種農地程度に見込まれる区域内の農地で、その規模が概ね10ヘクタール未満であるもの
  3. 農用地区域内農地・第一種農地・甲種農地・第三種農地のいずれにも該当しない農地である

第二種農地は、申請対象農地以外の農地で転用目的を達成することができると認められる場合は、農地転用はできないとされています。

逆に言うと、申請対象農地以外の農地で転用目的を達成できないと認められるときは、農地転用ができるということになります。

立地基準早見表

区分 許可・不許可 転用の難易度
農用地区域内農地 原則不許可× 超難
第一種農地 原則不許可×
甲種農地 原則不許可×
第二種農地 代替地がない場合許可○
第三種農地 原則許可○

まずは立地基準を確認することが大切!

農地転用を検討しているなら、まず一番最初にしなければならないことが、立地基準の確認です。農地転用をしたい農地が立地基準のうちどの区分に該当するのかを確認しておかなくてはなりません。

これを怠ってドンドン計画を進めていくのはとても危険です。申請時になって農地転用ができないなんてことが判明するという事態が起こるかもしれません。

特に住宅の建築や太陽光パネルの設置のために農地転用する場合、不動産や電力会社の契約が先行しますし融資計画も進めなければなりません。したがって周囲に多大な迷惑をかけてしまうかもしれませんので注意が必要です。

立地基準の確認の仕方

では、どうやって立地基準を確認したらよいのでしょうか。

一番良い方法は、各市町村の農業委員会に足を運んで、担当者に尋ねることです。私たち専門家もやっています。

農地転用をしたい農地の地番を確認し、担当者に聞いてみてください。すると、まず農用地区域内農地かどうかを確認してくれるはずです。

いわゆる「青地か白地」の確認です。

ここで「青地」となると、それは農用地区域に該当しているということになりますので、農地転用はかなり厳しくなります。しかし、まったく見込みが無いわけではありませんので、何の目的で農地転用するのかなど、担当者に計画を説明して転用可能かどうかを確認してみてください。

一方、「白地」だった場合は、「青地」より見込みはありますが、転用目的によってはできない可能性もあります。この場合も担当者に農地転用の計画を説明して、転用の可能性について確認してください。

なお、土地の地番さえ分かれば確認はしてもらえますが、あらかじめ法務局にて土地の登記簿謄本や公図を取得しておくと農地の面積や農地周囲の状況がつかめるので、担当者もより判断がしやすくなります。

なんの情報もなく農業委員会に押しかけても、担当者は当たり障りのないことしか答えられません。ですから、より具体的な話がしたいのであれば、多少は費用がかかりますがあらかじめ資料を集めておくのがよいでしょう。

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