市街化区域にある農地を他の目的に使用する場合、農業委員会に対してあらかじめ届出を行えば、転用許可は不要とされています。
これは、開発を優先的に進めていくべき市街化区域において、農地の転用を厳しく制限する利益が乏しいからと考えられます。
市街化区域についてはこちらをご覧ください。
届出は許可に比べて作成すべき書類も少ないため、時間をかければ専門家に頼ることなくご自身で手続きすることも可能ではないかと思います。
ここでは、農地転用届出の手続きについて解説していきます。
許可と届出の違い
そもそも許可と届出の違いは何でしょうか?
実は、きちんと定義がありますので、ここで確認しておきましょう。
許可
許可とは、一般的に禁止されている行為について、特定の場合または相手に限って、その禁止を解除することです。
世の中には、禁止されていることがたくさんあります。例えば、勝手に飲食店を営業してはいけませんし、勝手にお酒を販売することもできません。もちろん、勝手に農地を転用することも禁止されています。
もし、これらの禁止されている行為を勝手にすると、法律の定めに従って罰せられることになります。
しかし、許可を受けることによって、本来は禁止されている行為をしても法律違反とはならなくなるというわけです。これが許可の効果です。
余談ですが、本来、車を運転して道路を走ることは道路交通法によって禁止されています。しかし、免許証を取得することによってそれが可能になります。
つまり、私たちがいつも「免許」と呼んでいるものは、本当は「許可」に該当するものなのです。
届出
届出とは、役所に対して一定の事項を通知する行為のことです。
許可の場合、役所に対して許可を受けられるように請願する形になりますが、届出は一種の通知ですから、一方的に事実を記した書類を提出するだけの手続きとなります。
例えば、身近なものだと転出届、転入届などが届出に該当します。ご存知の通り、これらの書類は一方的に提出するだけの手続きです。
農地転用届出は特殊な届出!?
農地法の届出も届出ではあるものの、上記に例示したものとは性格が異なっています。
農地法の届出の場合、農業委員会は届出を受け取った際、受理または不受理の処分をすることができます。
本来、一方的な通知であるはずなのに不受理となる可能性があることから、実質的な性格は許可申請に近いとされています。
なお、次のような場合、届出は不受理となります。
- 申請農地が市街化区域内にない場合
- 届出者が届出に係る農地について権原を有していない場合
- 届出書に添付すべき書類が添付されていない場合
4条と5条届出
許可と同様に届出にも4条と5条の手続きがあります。4条と5条の違いについては、許可と全く同じ取扱いになりますので、ここでは省略します。
4条と5条の違いについてはこちらでご確認ください。
届出の必要書類
農地転用の届出の必要書類やその様式は、各農業委員会によって異なっている可能性がありますので、一般的なものを以下に示しておきます。
- 届出書
- 土地登記事項証明書
- 公図の写し
- 付近見取り図
- 配置図
- 住民票(譲受人が個人の場合・5条届出のみ)
- 法人登記事項証明書(譲受人が法人の場合・5条届出のみ)
- 仮換地証明書(土地区画整理事業地内の場合)
- 宅建免許(宅地分譲の場合)
- 遺産分割協議書等(相続未登記の場合)
- 委任状(行政書士に委任する場合)
手続きの流れ
届出の流れは以下の通りです。
許可とは違い、受理・不受理の判断は農業委員会が行います。
申請から受理の通知が発行されるまでの期間は、2週間程度となります。