通常の売買や贈与の場合、農地法3条許可や5条許可が必要となりますが、原則として当事者双方が連名で申請をしなくてはなりません。これを双方申請の原則といいます。
しかし、例外的に当事者の一方が単独で申請することができる場合があります。
単独申請ができるのは以下の場合です。
- 強制競売・担保権の執行としての競売
- 公売
- 遺贈
- 判決の確定
- 裁判上の和解
- 請求の認諾
- 民事調停の成立
- 家事審判・家事調停の成立 など
このうち、強制競売・担保権の執行としての競売、公売において農地の買受ける者は、農業委員会から交付される買受適格証明書が必要とされます。
競売・公売とは
競売・公売とは、債務者がその債務を履行しようとしない場合、強制的に債務者の財産を差し押さえ、強制的に売却する制度です。売却は入札によって行われ、最高価格で落札した者が買い受けることができます。
競売は、民間の債権者が裁判所に申し立てて強制的に売却することをといいます。例えば、Aがローン会社からお金を借りたが、Aがお金を返さないためローン会社が裁判所に申し立てて財産を差し押さえて売却し、ローン返済にあてるような場合です。
公売は、税金を滞納した者が国税局や税務署から財産を差し押さえられ、売却される場合です。
競売は債権者からの申立てにより、裁判所が不動産の売却を行うのに対し、公売は滞納税庁が国税徴収法に基づいて不動産を売却する点で異なっています。
なぜ買受適格証明書が必要なのか?
農地が競売において売却され、所有権移転が行われる場合にも農地法の許可または届出が必要とされています。
したがって、最高価格の落札をした者が農地法の許可を受けられなければ、所有権を移転することができなくなり、再度入札をやり直すことになってしまうのです。
農地法の許可を受けられる見込みがある者に証明書交付し、交付を受けた者だけを入札に参加させることによって、何度も入札を行うことのないようにしています。
買受適格証明書の交付
競売にかけられた農地の所有権を取得しようとする者は、入札に先立って買受適格証明書を入手し、裁判所に提出したうえで入札に参加します。(民間の競売の場合)
よって、事前に農業委員会(または都道府県知事)に対し、買受適格証明願を提出し、証明書交付の申請を行います。交付を受けた農業委員会は農地法の許可または届出の受理ができるかどうかを判断し、受理が可能であるなら買受適格証明書を交付します。
このとき、耕作目的で入札をするのであれば3条目的の買受適格証明書が必要であり、農地以外の目的に使用するのであれば5条目的の買受適格証明書が必要になります。
買受適格証明書が交付された後の流れ
入札において最高価格で落札した者は、正式に農業委員会に対して3条許可または5条許可の申請を行うことになります。このとき、冒頭でご紹介した通り単独申請が可能です。
許可後は交付された許可書を裁判所に提出し、裁判所から売却許可決定を受けます。買受人は定められた期日までに代金を納付し、その納付が完了した時点で所有権を取得することができるとされています。