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農地の転貸

転貸農地を貸し借りするためには、農地法3条許可を受ける必要があります。

では、借りた農地をさらに転貸(いわゆる又貸し)することは可能なんでしょうか?

今回は農地の転貸について解説したいと思います。

民法における転貸借

民法には転貸についての規定があります。条文は次の通りです。

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。(民法612条)

言い換えると、民法上、貸主の承諾があれば借主は転貸をすることができるということになります。

農地法の規制

農地は国民のための資産として位置づけられ、保護の対象となっていることから農地法3条許可の許可基準には次のような規定があります。

次に該当する場合、農業委員会は許可を行うことができない。

  1. 効率的に利用して耕作等の事業を行うと認められない場合
  2. 農業生産法人以外の法人による権利取得の場合
  3. 信託の引受けにより1号に掲げる権利が取得される場合
  4. 耕作等の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合
  5. 下限面積制限に抵触する場合<令和5年4月1日廃止>
  6. 農地等を転貸する場合
  7. 地域における農地等の農業上の効率的・総合的利用の確保に支障を生ずる恐れがあると認められる場合

農地法の規定では農地を転貸する場合、そもそも3条許可を受けることができないことを明確に示しています。

したがって、民法では認められていた貸主の承諾があったとしても、農地の転貸はできないことになります。これを転貸禁止の原則といいます。

農地法3条許可の許可基準についてはこちら→ 許可基準① 許可基準②

農地の転貸が禁止される理由

農地の転貸が禁止されるのは、転貸が自由に認められてしまうと、権利関係が複雑化してしまうからです。

例えば、貸主が農地の返却をしてほしい場合、最終的な借主(耕作者)との間に何人もの転貸が行われていると、契約の解除が困難となることが考えられます。

農地法は、農地の賃貸借に関して 【所有者】⇒【耕作者】 というシンプルな関係を求めているといえます。

転貸禁止の例外

農地法はいくつかの例外を設け、一定の場合には転貸ができるようになっています。

以下の場合、例外的に農地の転貸が可能です。

  1. 当該事業を行う者又はその世帯員等の死亡又は第2条第2項に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため一時貸し付けようとする場合
  2. 当該事業を行う者がその土地をその世帯員等に貸し付けようとする場合
  3. 農地保有合理化法人又は農地利用集積円滑化団体がその土地を農地売買等事業の実施
  4. その土地を水田裏作の目的に供するため貸し付けようとする場合
  5. 農業生産法人の常時従事者たる構成員がその土地をその法人に貸し付けようとする場合

上記の通り、あくまで営農を継続するための必要最低限の転貸が認めらているだけで、営利目的の転貸は一切禁止されています。

世帯員等

世帯員等の定義は次の通りです。

  • 住居および生計を一にする親族(同居する親子など)
  • 住居および生計を一にする親族が行う耕作または養畜に従事するその他二親等内の親族(世帯を別にする親子など)

一時貸付け

今まで住居および生計を同一にしていた親族が、一時的な理由で住居および生計を異にすることがあっても、以下の場合、依然として世帯員として取り扱われます。

  1. 疾病または負傷による療養
  2. 就学
  3. 公選による公職への就任
  4. その他農林水産省令で定める事由(懲役刑、禁錮刑の執行、未決勾留)

世帯員間での権利の設定

上記の世帯員等の条件を満たせば、例外として3条許可を受けることができます。つまり、転貸が可能になるというわけです。

例えば、他人Aから農地を借りて農業を行う親Bが、その農地を同居する息子Cに貸すこができます。このとき、親Bと息子Cが連名で3条許可を受ける必要があります。

公的機関による農地の転貸

平成25年に農地中間管理事業の推進に関する法律および農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律が成立し、農地中間管理機構が各都道府県に設置されることになりました。

農地中間管理機構は、農地の貸し出しを希望する農地所有者から農地を借り受けて集約化し、借受けを希望する農家に貸し出す事業を行っています。

公的機関による農地の転貸が、国の事業として行われており、遊休農地の活用方法として期待されています。

農地中間管理機構についてはこちらで詳しく解説しています。

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