農地転用許可は農地を農地以外の目的で使用するための許可ですが、5条許可においてはもう1つ大事な効果があります。
それは、所有権移転や権利設定の効果が完成するという効果です。
例えば、農地以外の土地を売買する場合、行政の許可は必要ありません。当事者が契約を交わしせば所有権は移転します。
しかし、農地の場合は当事者同士で契約を交わしただけでは完全に所有権は移転しません。農地転用の許可があってはじめて所有権移転が完成するという特殊な効果があります。
売買契約を解除しても許可は有効
例えば、農地の売買契約を交わし、5条許可を受けた後に売買契約を解除したら、許可も取り消されることになるのでしょうか?
この場合、許可は消滅せずに存続します。しかし、契約は解除されていることから所有権は移転しません。ですから、許可の意味がなくなってしまいます。
非農地化すると許可不要!?
例えば、農地の売買契約が成立した後、5条許可を受けることなく時間が経過し、売買目的地が非農地化してしまった場合、その農地の所有権は許可がないのにも関わらず有効に移転することになります。
農地は現況主義を採用しており、登記の地目より実際の現場状況を重視します。売買契約時には5条許可がなければ所有権移転は完成しない状況でした。
しかし、非農地化してしまったことで農地法の規制がかからなくなり、5条許可がなくても当事者の契約だけで所有権移転が完成してしまう状況に変わってしまったのです。
過去の判例では、転用目的の農地売買契約が成立し、その後、売主が土盛りをしてその上に建物を建てたために農地が非農地化した事例について、知事の許可なしで売買契約は完全に効力を生ずるとしました。(最判昭42.10.27)
農地は非農地化すると、宅地や雑種地と同じ扱いになるということです。
許可だけ、契約だけという状態は避ける
農地に関する契約をした後、許可を受けずに放置しておくと権利関係が中途半端な状態になり、トラブルの火種となる可能性があります。非農地化するとそのリスクはさらに高まります。
契約後は速やかに許可申請をするとか、許可後に契約を解除したら許可の取消しをするなど、権利関係をクリアにしておくことが大切です。当事者の合意で契約を解除する場合、新たな許可(権利を戻すための許可)が必要になる可能性もありますのでご注意ください。
※この記事の内容は、3条許可による権利移転、権利の設定にも適用されています。