何か事業を始めようとお考えの方にとって常に悩ましい問題といえば、やはり資金繰りではないでしょうか。
農業も例外ではなく、新規就農するとなると設備投資が必要になりますし、農地を借りるとなれば毎月の賃借料も支払わなければなりません。
また、農作物を栽培し、販売することではじめて売上となるため、営農を開始してからしばらく無収入になってしまうというリスクもあります。
おそらく、農業に対して意欲や興味があったとしても、資金繰りが不安でなかなか行動に移せないという方が少なからずいらっしゃると思います。
今回は、若手の新規就農希望者を対象とした給付金である、青年就農給付金制度についてご紹介します。
青年就農給付金とは
青年就農給付金とは、45歳未満の方の就農意欲の喚起と就農後の定着を図るために創設された給付金のことで、一定の要件を満たせば、国から一人あたり年間最大で150万円が支給されます。
青年就農給付金には、準備型と経営開始型の2種類があり、新規就農を目指して研修を受けているも者から、農業を始めて間もない方までを対象としています。
準備型の給付金について
準備型とは、都道府県が認める農業大学校や先進農家、先進農業法人等で研修を受ける就農希望者に対して、最長2年間、年間最大で150万円が給付されるものです。
準備型の青年就農給付金を受給する要件
準備型の給付金を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
- 研修終了後1年以内に原則45歳未満で独立・自営就農または雇用就農もしくは親元就農する者。
- 農業経営者となることについての強い意欲を有していること。
- 親元就農する者については、就農後5年以内に経営を継承するかまたは農業法人の共同経営者になること。
- 都道府県等が認めた研修機関等で、概ね1年以上(1年につき概ね1200時間以上)研修を受け、国が定める研修計画を作成すること。
- 先進農家・先進農業法人で研修を受ける場合にあっては、その農家等と過去に雇用契約を結んでいないこと、またはその経営者が給付対象者の親族(3親等以内の者)ではないこと。
- 常勤の雇用契約を締結していないこと。
- 生活保護、求職者支援制度など、生活費を支給する国の他の事業と重複受給でないこと。
- 原則として「一農ネット」に加入すること。
独自・自営就農
独立・自営就農とは、次の事項に該当する者をいいます。
- 農地の所有権または利用権を給付対象者が有している。
- 主要な機械、施設を給付対象者が所有または借りている。
- 生産物や生産資材等を給付対象者の名義で出荷・取引する。
- 給付対象者の農産物等の売上や経費の支出などの経営収支を給付対象者の名義の通帳および帳簿で管理する。
- 給付対象者が農業経営に関する主宰権を有している。
一農ネット
青年新規就農者と農林水産省が直接つながる、青年新規就農者のためのネットワークのこと。登録制になっており、就農者または就農希望者が互いに交流することができるようになっている。
また、メルマガ登録することになっており、農水省から直接情報メールが届くようになっている。
給付対象者の報告義務
準備型の給付対象者は、給付を受け取ってからも以下のような報告義務が生じますので注意が必要です。
研修状況報告
- 国が定めた研修状況報告書を半年ごとに提出する。報告は給付対象期間経過後、1ヶ月以内に行う。
就農報告
- 研修終了後、独立・自営就農、雇用就農または親元就農した場合は、就農後1ヶ月以内に国が定めた就農報告を提出する。
就農状況報告
- 研修終了後5年間、毎年7月末および1月末までにその直前の6ヶ月間の国が定めた就農状況報告を提出する。
さらに、事業終了後に国の会計検査(給付金を受けたことが適正かどうかの検査)を受けるため、関係書類を10年感程度保存しておく必要があります。
給付金の停止
次のいずれかに該当してしまうと、給付が停止されてしまいます。
- 給付対象者の要件を満たさなくなった場合
- 研修を途中で中止または休止した場合
- 国が定めた研修状況報告書を提出しなかった場合、またはこの報告書に基づき実施される研修実施状況の現地確認で適切な研修を行っていないと判断された場合
- 国が実施する報告の徴収または立入調査に協力しない場合
給付金の返還
次のいずれかに該当すると、給付の停止どころか返還しなければならないこともあります。
全額返還
- 研修実施状況の現地確認等で適切な研修を行っていないと判断された場合
- 研修終了後1年以内に原則45歳未満で就農しなかった場合
- 親元就農者について、就農後5年以内に経営継承しなかった者または農業法人の共同経営者にならなかった場合
- 給付期間の1.5倍(最大2年)の期間、独立・自営就農または親元への就農を継続しない場合や就農状況報告等を行わなかった場合
一部返還
- 給付対象者の要件を満たさなくなった場合、または研修を途中で中止、休止した場合は、既に給付した給付金の対象期間中である場合にあっては、残りの対象期間の月数分の給付金を月単位で返還する
- 国が定めた研修状況報告を行わなかった場合は、その報告に係る対象期間給付金を返還する
申請方法
申請は、研修計画を作成し、給付要件チェックリストと個人情報同意書を添付して県知事宛てに提出します。
愛知県の場合、提出先は以下の通りです。
研修先 | 提出先 |
---|---|
市町村推薦の研修機関等の研修生 | 農業改良普及課 |
市町村推薦以外の研修機関等の研修生 | 農業改良普及課又は農業経営課 |
県農業大学校の学生及び研修生 | 県立農業大学校 |
研修計画を提出した後、県の担当者の面接を受け、給付申請をすることで給付が開始されます。
経営開始型の青年就農給付金について
経営開始型とは、独立・自営就農で新規就農した者に対して、農業を始めてから経営が安定するまで、最長5年間、年間最大150万円が給付されるものです。
給付額の変動制
平成27年度の新規給付対象者から、前年の所得に応じて給付額が変動することになりました。
変動の仕組み
変動制の概要は以下の通りです。
- 前年の所得が100万円未満
→給付金額は150万円/年 - 前年の所得が100万円以上350万円未満
→給付金額は変動 - 経営開始1年面は150万円/年
給付金額の計算方法
変動する給付額の計算方法は次の通りです。
経営開始型の青年就農給付金を受給する要件
経営開始型の給付金を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
- 独立・自営就農であること。(※クリックすると上部にスクロールします)
- 独立・自営就農時の年齢が原則45歳未満の認定新規就農者であり、農業経営者となることについて強い意欲を有していること。
- 青年等就農計画等が独立・自営就農5年後には農業で生計が成り立つ実現可能なものであること。
- 市町村が作成する「人・農地プラン」に中心となる経営体として位置付けられていること、または農地中間管理機構から農地を借りていること。
- 生活保護等、生活費を支給する国の他の事業と重複受給でないこと、または雇用事業による助成を受けたことがないこと。
- 原則として「一農ネット」に加入すること。(※クリックすると上部にスクロールします)
青年等就農計画等
農業経営基盤強化促進法に定められたもので、新たに農業を営もうとする青年等が青年等就農計画を作成し、認定を受けると「認定就農者」となることができ、資金的な支援を受けることができるようになります。
青年等就農計画等とは、この青年等就農計画に青年就農給付金申請添付書類を加えたものです。
給付対象の特例
一定の要件を満たすと、以下の特例が適用されます。
- 夫婦ともに就農する場合は、夫婦合わせて1.5人分給付される。
- 複数の新規就農者が法人を新設して共同経営を行う場合は、新規就農者それぞれに給付される。
給付対象者の報告義務
準備型と同様に、給付対象者は、給付を受け取ってからも以下のような報告義務が生じますので注意が必要です。
就農状況報告
- 給付期間内および給付期間終了後3年間、毎年7月末および1月末までにその直前の6ヶ月の国が定めた就農状況報告を提出する。
さらに、事業終了後に国の会計検査(給付金を受けたことが適正かどうかの検査)を受けるため、関係書類を10年感程度保存しておく必要があります。
給付金の停止
次のいずれかに該当してしまうと、給付が停止されてしまいます。
- 給付対象者の要件を満たさなくなった場合
- 農業経営を中止または休止した場合
- 給付期間内および給付期間終了後3年間、国が定めた就農状況報告を行わなかった場合、またはこの報告に基づき実施される就農状況の現地調査等で適切な農業経営を行っていないと判断された場合
- 国が実施する報告の徴収または立入調査に協力しない場合
- 給付対象者の前年の総所得(農業経営開始後の所得で給付金は除く)が350万円であった場合
給付金の返還
次のいずれかに該当すると、給付の停止どころか返還しなければならないこともあります。
- 給付の停止条件の1~3に該当した時点がすでに給付の対象期間である場合については、残りの対象期間の月数分の給付金を月単位で返還する。
- 虚偽の申請行った場合には、給付金の全額を返還する。
- 農地の過半を親族から賃貸している場合において、親族から賃借している農地を5年間の給付期間中に所有権移転しなかった場合、給付金の全額を返還する。
申請方法
準備型と同様に、青年等就農計画に所要の追加資料を添付した申請書類を市町村に提出する必要がありますが、各市町村により申請・給付方法が異なりますので、事前に確認しておく必要があります。