Q.分家住宅は売買できますか?
市街化調整区域内では原則として建築行為は認められていませんが、一定の基準を満たすことができた場合には、例外として認められます。分家住宅もその例外の1つです。
愛知県では、開発審査会基準1号において分家住宅の基準が定められています。
分家住宅の要件についてはこちらをご覧ください。
基準には明確に売買をしてはならない旨の記載はありません。しかし、申請者の要件として農家の親族でなければないですし、売買ができるとすると結果的に誰でも市街化調整区域に居住することができるようになってしまうことから、売買は認められないという結論を導き出すことができます。
しかも、建築許可や開発許可の申請には、住宅を転売や賃貸しない旨を約束した誓約書を提出することになると思います。このことからも原則的に禁止されていると考えられます。
やむを得ない場合は認められる規定がある
しかし、一定の期間、継続して適正に住宅を使用し続ければ、その用途を変更することが認められる規定が存在します。
つまり、分家住宅についてはその家族的要件を免除されることになるため、売買が可能になるというわけです。
この規定は、開発審査会基準16号「相当期間適正に利用された住宅及び学生下宿のやむを得ない用途変更」において定められています。
やむを得ない用途変更の要件
やむを得ない事情による用途変更が認められるには、次の要件を満たす必要があります。
※ここでは学生下宿に関する規定は省略します。
- 原則として都市計画法に基づく許可を受けて建築された後、10年以上適正に利用された1戸の専用住宅等であること。
- 社会通念上やむを得ない事情があること。
- 用途変更後の建築物は、原則として1戸の専用住宅とし、自己の居住用として使用す
ること。 - 専用住宅等を譲渡する場合にあっては、譲り受ける者の現在居住している住居について過密、狭小、被災、立ち退き、借家等の事情があること。
- 他法令による許認可等が必要な場合は、その許認可等が受けられるものであること。
適正に利用された
「適正に利用された」とは、次の場合をいいます。
運用基準
- 許可を受けた者が建築後に継続して許可を受けた建築物の用途のとおり利用し、その間に都市計画法第81条の規定に基づく監督処分を受けていないことをいう。
専用住宅等
「専用住宅等」とは、次の住宅のことです。
- 運用基準
- 専用住宅
- 併用住宅
やむを得ない事情
「やむを得ない事情」とは、以下の掲げるものです。
運用基準
- 主たる収入者が、破産法に基づく破産手続開始の決定又は民事再生法に基づく再生手続開始の決定により、現在の住宅に居住していることが困難になった場合。
- 当該住宅が裁判所の競売又は官公庁の公売に付された場合。
- 主たる収入者の死亡、重度障害、失踪により、経済的負担が生じ、現在の住宅に居住していることが困難になった場合。
- 主たる収入者の転勤、転職又は定年により、現在の住宅に居住していることが困難になった場合。
- 家族の健康上の事情、家族構成の変更に伴い現在の住宅に居住していることが困難になった場合。
- 社会情勢による経営の悪化等の理由により現在の事業を行うことが困難になった場合。
このうち、1、2、3に該当する場合は、適正に利用された相当期間に関わらず用途変更ができるとされています。つまり、10年を待たずに用途変更が可能になるということです。
10年経過しない間に引っ越すことになったら?
もし、分家住宅を建築して10年経過しない間に勤務先から突然転勤を命じられ、引っ越さなければならなくなったらどうなるのでしょうか?
転勤は、上記の「やむを得ない事情」に含まれていますが、10年以上適正に使用することが条件となっています。
したがって、10年経過しない間に引っ越すことになってしまった場合、売却することができず、空き家として放置しておくしかないということになってしまいます。しかも、空き家となった住宅の固定資産税も徴収されるという最悪な事態です。
この点について、以前、愛知県内の市役所に問い合わせたところ、市役所の回答として「県の担当者と協議の上、個別に判断する」というものでした。
つまり、開発審査会基準を満たしていなくても、それぞれの事案について県が個別に審議し、10年経過していなくても、やむを得ない理由として例外的に認められる可能性があるということです。
現代のサラリーマンにとって10年間まったく転勤が無いという保証などありませんし、今後の出世のことを考えると、どうしても断れないこともあると思います。
転勤が怖くてマイホームを手に入れことができないとなると、この規制が県民の自由な経済活動を制限する権力の濫用ではないかという批判が起こる可能性もあるでしょう。
そもそも、開発審査会基準とは、都市計画法に基づいて各都道府県や一部の市町村が独自に定めている基準ですので、そこには大きな裁量権が認められているはずです。
ですから、規制と現実のギャップを埋めるために行政も柔軟に対応してくれていると考えられます。
たとえ基準を満たさない事態が発生したとしても、その文言を鵜のみにせず、まずは役所に相談してみましょう。何らかの方法が見つかるかもしれません。