農地に太陽光発電設備を設置するためには農地に土を入れて高くしたり(造成)、平にする(整地)したりする必要があります。
おそらくあなたは、このような造成工事をするには、「ひょっとして開発許可が必要ではないか?」と心配に思っているかもしれません。
開発許可には多くの提出書類が必要があり、ご自身で申請されるのはかなり困難です。したがって多くの場合、業者に依頼することになると思います。
業者に依頼するとなると、それなりの費用がかかりますから、開発許可が必要かどうかという問題に対して大きな関心をお持ちなのではないでしょうか?
ということで今回は、農地に設置する太陽光発電設備と開発許可についてご紹介します。
開発許可
ではまず、開発許可について簡単に確認しましょう。
開発許可については、都市計画法に次のように定められています。
都市計画法第29条(抜粋)
開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
開発許可についての詳しくはこちらをご覧ください。
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開発許可申請
この条文より、開発行為をする者は許可を受けなければならないことが分かります。では、開発行為とは一体どのような行為なのでしょうか?
開発行為とは
都市計画法は開発行為を次にように定めています。
都市計画法第4条12項
主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいう。
開発行為について詳しくはこちらをご覧ください。
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開発行為とは
詳しい説明は省きますが、切土・盛土によって土地の形状を変更することは、区画形質の変更に該当します。
ただし、土地の形状の変更に該当しても、一定の規模以下のものは開発行為にならないとされています。例えば、愛知県の場合、30センチ未満の土地の切盛は開発行為に該当しません。この基準は各自治体によって異なっていますので事前の確認が必要です。
では、上記の定めに従うとすると、太陽光発電設備が建築物または特定工作物に該当するかどうかが開発許可の要否を決することになります。
太陽光発電設備は建築物又は特定工作物に該当するか?
太陽光発電設備が建築物に該当するかどうかについて、国土交通省から次のような発表がありました。
太陽光発電設備等に係る建築基準法の取扱いについて
土地に自立して設置する太陽光発電設備については、太陽光発電設備自体のメンテナンスを除いて架台下の空間に人が立ち入らないものであって、かつ、 架台下の空間を居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の保管又は格納その他の屋内的用途に供しないものについては、法第2条第1号に規定する建築物に該当しないものとする。
農地に設置する太陽光発電設備はソーラーパネルが低い位置に設置されますから、メンテナンス以外の時にパネルの架台の下に人が入って作業などをすることは考えられません。
したがって、農地に太陽光発電設備を設置するために開発許可は必要ないという結果が導き出されます。
太陽光発電設備の附属設備に注意!
太陽光発電設備を設置する際、ソーラーパネルだけを設置するわけではありません。
例えば、太陽光によって発電した電気を家庭用の電気に変換するパワーコンディショナー、発電設備から送電線につなぐ送電設備、発電した電気量を計る電量計などがあります。
発電設備の規模が多きくなると、附属設備も大きなものが必要となります。
中でもパワーコンディショナーは、それ自体を収納するコンテナ(イナバ物置みたいなもの)が必要であり、そのコンテナが建築物に該当する可能性があります。
この点について、国土交通省から次のような発表がありました。
パワーコンディショナを収納する専用コンテナに係る建築基準法の取扱いについて(要約)
パワーコンディショナとしての機能を果たすために必要となる最小限の空間のみを内部に有し、稼働時は無人で、機器の重大な障害発生時等を除いて内部に人が立ち入らないものについては建築物に該当しないものとする。ただし、複数積み重ねる場合にあっては、建築物に該当するものとする。
つまり、必要以上に大きなコンテナは建築物に該当する可能性があるということになります。この判断は非常に微妙ですので、事前にコンテナの図面や仕様書を持って市役所の都市計画課で確認しておくと良いでしょう。
まとめ
太陽光発電設備を設置するための土地の造成自体は開発行為に該当しないので開発許可は不要となります。
しかし、発電設備に必要な附属設備が建築物に該当してしまうと、土地の造成が開発行為に該当し、開発許可が必要になります。
ただし、切土や盛土の程度によっては開発行為には該当しません(愛知県では30センチ。ただし、各自治体で異なる場合あり)。このとき、土地の所在が市街化調整区域内であれば建築許可が必要になります。