農地を宅地にするためには農地転用の許可や届出が必要になります。そして、農地法関係の業務においては、最も需要のある手続きです。
しかし反対に、宅地を農地にできないだろうか?とお考えの方もいらっしゃるかも知れません。
そこで今回は、宅地を農地にできるのか?そのためには何らかの許可や手続きが必要になるのか?について考えてみたいと思います。
結論!耕して農地にすればよい
農地を勝手に宅地にしてはいけませんが、宅地を農地にしてはいけないという法律はありません。
したがって、宅地を農地にするのに法的な規制はありませんので、結論としては、耕して現況農地にすればよいということになります。
意外かもしれませんが、宅地の転用に関しては自由にできます。
固定資産税は安くなるのか?
宅地を農地にするメリットの1つが、固定資産税の優遇だと思います。
特に市街化調整区域では、農地の固定資産税は宅地に比べて低く抑えられていますから、気になる方は多いのではないでしょうか。
固定資産税は毎年1月1日を基準として、その所有者に課税されることになりますが、現況主義という考え方をとっていて、登記地目ではなく現況地目を基に課税地目を判断しています。
そこで、「宅地を農地にすれば、来年の1月1日から農地としての課税になるかも」と期待されるかもしれませんが、おそらく現況農地になったからといって宅地からすんなり課税地目が農地に変わることはないと考えられます。
というのは、宅地から農地にした土地は、登記上は依然として宅地です。つまり、農地法の規制がないため簡単に宅地に戻すことができるという、オイシイ農地になってしまうからです。
それに加えて、農地法の規制のある本来の農地と同等の固定資産税となると、あまりにも都合の良い土地ということになります。不平等と言わざる得ません。
ですから、固定資産税を農地課税にするためには、登記の地目変更を先に行い、農地法の規制のある農地に変更する必要があると考えられます。
なお、そもそも地目を変更した場合、変更の日から1ヶ月以内に地目変更登記をしなければならないことになっています。
不動産登記法37条
- 地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。
したがって、地目を宅地のままにしておくことはできません。
前述のとおり、単純に宅地を耕したところで簡単に農地と認められるわけではありませんので、先走ってしまうと、不動産登記法に抵触してしまう可能性があるということになります。
なお、この義務を怠ると、10万円以下の過料が課せられますのでご注意ください。
農業は地域産業であることをお忘れなく!
宅地を農地にすることは、個人の自由です。
しかし、農業は地域産業であり、地域の専業農家の方々は、JAに加盟したり水利組合の組合員として水路等を維持管理したり、周囲の農家と協力して地域で農業に取り組んでいます。
なかには地域で有機栽培に取り組んでいる農家の方々もいらっしゃることでしょう。
家庭菜園程度ならよいかもしれませんが、勝手に農業用水を使ったり、周囲の環境を無視して農薬をまいたりすることは厳に慎まなければなりません。
本気で宅地を農地にして営農するなら、事前に農業委員会に相談しましょう。