市街化調整区域において店舗を建築する場合、開発行為に該当しますので開発許可または建築許可が必要になります。
開発行為についての詳しい説明はこちらからどうぞ。
市街化調整区域での開発または建築は、原則として禁止されています。
しかし、市街化調整区域に居住している人々の日常生活に必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗等は、例外として認められています。(都市計画法34条1号「公益上必要な建築物及び日常生活のため必要な店舗等」)
都市計画法34条1号についてはこちらで確認できます。
建築可能な店舗の一覧はこちらをご覧ください。
前述の通り店舗の建築は開発行為ですから、理由書を書くときは都市計画法と農地法を意識する必要があります。
それでは、実際に提出した理由書をご紹介します。
記入例
今回の案件は、市街化調整区域に美容院を建築するケースです。
隣り合う2筆の土地を農地転用し、うち1筆に店舗を建築し、もう一筆を駐車場にする計画で、店舗用の土地は売買し、駐車場用の土地は賃貸するという契約でした。
敷地面積の合計が500㎡以下でしたので、建築許可と農地転用許可を同時申請しました。
今般、上記土地に店舗(美容院)を建築したく申請します。
現在、私は○○にある美容院にて美容師として働いております。私は、18歳の頃から××市内の美容院に勤務し、アシスタントとして働きながら、通信教育で美容師免許取得の為に勉強し、昨年、ついに念願の美容師となることができました。
私は、働き始めた当初から、いずれは独立し、自分の店を持ちたいという夢を持っておりました。日々の業務の中でも、技術を磨くだけでなく、将来を見据えて経営や財務の事なども意識しながら働いてまいりました。
その甲斐もあって、ここ数年、「独立しても十分にやっていける。」という自信も大きくなっておりました。
世間では男性の美容に対する意識が高まっており、今後、男性からの需要が増える事が予想され、新規のお客様獲得の期待もできることから、この度、長年の夢であった独立をする決意をしました。
土地を選定するにあたり、お客様が来店し易く安定した集客が見込めるように、集落内で、かつ幹線道路に近い土地を探しておりましたところ、幸いにも県道沿いの土地所有者様から申請地の店舗側の地土を譲り受け、駐車場側の土地を賃貸する話がまとまり、さっそく申請地として選定しました。
申請地は閑静な集落内にあり、周辺農地への影響も少なく、さらに以前勤めていた美容院で担当していたお客様で、申請地方面から来て下さっていた方も何名かおられる為、集客の観点からも店舗(美容院)建築地として最適であるといえます。
既に従業員の選定も済ませており、着々と準備を進めております。私はこの業界に入ってから今年で12年目になり、十分な経験を積んでおりますので、経営に関して不安はありません。
以上の事をご理解頂き、処理していただけます様、よろしくお願い申し上げます。
※ポイントを赤字にしています。
ポイント① 現在の状況を書く
簡単な自己紹介を含め、開業をしようと決意したまでの経緯を書きます。
突発的なひらめきで開業をするのではなく、以前から計画的に進めてきたことをアピールするとよいでしょう。
開業してこんなことを実現したいという熱意を簡潔にアピールするのも良いと思います。
ポイント② 経営力があることを書く
店舗建築の場合、許可申請の添付書類に事業計画書が必要になります。店舗を建築したものの、すぐに倒産してしまっては空き家が増えてしまうからです。
都市計画法では経営についての規制はありませんが、一般論として行政は、きちんと持続的に経営していけるかを気にしています。市町村によっては、店主が役所に出頭して面談をする場合もあります。
記入例では、長年の経験があることと、日頃から経営について意識しながら働いてきたことを書き、経営面について心配ないことを説明しています。
ポイント③ 集客の見込みを書く
集客の見込みを書いておくことで、継続的な経営をさらにアピールすることができます。
記入例では、美容意識の高い男性客を獲得していくこと、申請地周辺の既存客を取り込んでいくことを説明し、開業後の売上が見込めることをアピールしています。
ポイント④ 周辺地域のための店舗であることを書く
都市計画法34条1号で例外的に認めているのは、市街化調整区域に居住する者のための店舗です。したがって、集客のターゲットとしては、基本的に申請地周辺に住む人たちでなくてはいけません。
事業によっては通販事業をすることもあるかもしれませんが、通販事業を強調して書くのは控えたほうが良いでしょう。
法律の趣旨から考えると、周辺地域の生活向上につながるようなアイデアなどを盛り込むより効果的だと思います。
なお、通販専門や訪問販売専門の店舗は建築できませんのでご注意ください。
ポイント⑤ 土地の選定理由を書く
なぜその土地を選んだのか?を書きます。
今回の案件は、来客がしやすいように幹線道路沿いの土地を選定しています。幹線道路沿いは市街化調整区域であっても今後開発が進んでいく可能性がありますので、農地転用はしやすい土地だと思います。
ポイント⑥ 周辺農地への影響がないことを書く
農地法では、周辺農地の悪影響を及ぼす農地転用は認められていません。したがって、農地法対策として、周辺農地への影響がないことを明記しておきましょう。
まとめ
いかかでしょうか?
開業を目指す方なら、事業計画を考えたり、店の立地を熟慮することは当たり前のことだと思いますので、理由書の内容についてはあまり苦労しないかもしれません。
上記のポイントを抑えて当てはめれば、良い理由書を書き上げることができると思います。
参考にしてみてください。