おそらくあなたは、住宅を建てようとしているか、もしくは何らかの商売をするための店舗を構えようと検討し、役所の都市計画課で相談したところ担当者から、
「線引き前から宅地かどうか」
「線引き前から継続して所有しているか」
などと尋ねられたものの、「線引き」の意味が分からず、スッキリしないまま窓口を後にしたことがあるのではないでしょうか。
「線引き」は、法律上の用語ではなくいわゆる俗語的に利用されており、業界の人間には使いやすい言葉なのかもしれませんが、一般の方にとってはかえって分かりにくいものとなっています。
しかし、「線引き」は、市街化調整区域ににおいて建築をする際に重要な問題になってくるため、一般の方にとってむしろ知っておくべきポイントでもあります。
そこで今回は、都市計画法上の「線引き」とは、一体何を意味しているのかをご紹介します。
「線引き」とは市街化区域と市街化調整区域の区分のこと
結論から言うと、「線引き」とは市街化区域と市街化調整区域の区分のことです。区域区分とも言われます。
線引き制度は、昭和43年の新都市計画法が成立した時に生まれたもので、都市が無秩序に拡大(スプロール)するのを防ぐことを目的に、市街化区域と市街化調整区域に区分し、市街化調整区域においては一般住宅建設等を厳しく制限するものです。
愛知県においては、6つの都市計画区域があり、その全てにおいて線引きがされています。
都市計画区域
都市計画区域とは、一体の都市として総合的に整備、開発し保全する必要がある区域で都道府県知事によって指定された区域のことです。
愛知県では、名古屋・尾張・知多・豊田・西三河・東三河の6つの都市計画区域が指定されています。
<愛知県の都市計画区域>
線引き前とはいつのことなのか?
線引きが市街化区域と市街調整区域の区分のことであることはご理解いただけたと思います。では、よく言われる「線引き前」の線引きはいつを基準としているのでしょうか?
これは、市街化区域と市街化調整区域に指定された日を基準としています。ですから、「線引き前」とは、市街化区域と市街化調整区域に指定された時よりも前ということを意味しています。
線引きの日は地方によりバラバラですが、愛知県においては、都市計画区域内の一部を除くほとんどの市町村で昭和45年11月24日が指定日となっています。
よって、愛知県で「線引き前」とは、昭和45年11月23日以前と言い換えることができるでしょう。
線引き前から宅地であることの証明
線引き前から宅地であって現在まで継続して宅地である土地は、開発許可または建築許可の対象となります。(開発審査会基準第17号 既存宅地における開発行為または建築行為)
つまり、市街化調整区域での建築が見込める土地ということです。
許可を受けるためには、その事実を客観的に書面で証明しなければなりません。その証明として認められるものは以下の通りです。
- 土地の登記事項証明書の地目が宅地であるもの
※登記日付が昭和50年4月1日以降であり、原因日付が線引き前に遡及しているものを除く - 建築物が存在していたことが、建物の登記事項証明書等により確認できるもの
- 平成12年5月19日改正前の都市計画法第43条第1項第6号の既存宅地確認をうけたもの
- その他、公的資料により確認できるもの
登記の日付を必ず確認!
線引き前の証明として土地の登記事項証明書は有効ですが、その日付に注意しなければなりません。
登記の表題部には、原因日付と登記日付というものがあります。愛知県の基準では、この原因日付が線引き前で、かつ登記日付が昭和50年4月1日以降のものは、線引き前から宅地であることの証明にはならないので注意が必要です。