3条許可と5条許可については、双方申請の原則といって、農地の譲渡人または貸す人の双方が申請者となります。一方、4条許可については、農地の所有者が単独で申請することになります。
例えば、農地に分譲住宅を建てる時は5条許可が必要ですが、この場合、その農地の所有者と分譲住宅を建築する宅建業者が連名で申請することになります。
また、自己の農地に住宅を建てて自分が住む場合は4条許可が必要ですが、この場合は所有者が単独で申請します。
3条 | 双方 |
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4条 | 単独 |
5条 | 双方 |
登記で所有者を判断する
農地転用の申請において、農地の所有者は必ず申請人となりますが、本当に所有者かどうかを確認しなければなりません。そこで利用されるのが、土地の全部事項証明書です。いわゆる登記簿謄本というやつです。
土地の登記は表題部と権利部という2部構成になっていて、所有者は権利部を見て確認します。権利部は証明書の下部にあり、所有者の住所氏名が表記されています。また、所有者だけではなく、抵当権などの担保権や用益権が設定されているかも確認することができます。
この全部事項証明書は農地転用に絶対必要な添付書類となっています。
登記の住所と現在の住所が違う!?
登記で農地の所有者を確認できますが、所有者の住所が現在の住所と違っていることが度々あります。
実は、登記は義務ではないため、登記をした後に引越しなどで住所が変更しても、登記の情報は登記時のまま残ってしまっているのです。これは違反ではありませんので安心してください。
しかし、登記の住所と現在の住所が違っていては、所有者であることが証明できなくなってしまいます。大袈裟かもしれませんが、同姓同名の別人かもしれないという可能性は否定できません。
では、どのように所有者であることを証明すればよいのか?
この場合、住民票を添付することによって前の住所と現在の住所がつながることを証明します。住民票には前住所が記載されていますので、そこに登記時の住所が記載されていれば本人であることが証明されます。
もし、何度も住所を変更していて、住民票にも記載されていないときは、戸籍の附票を添付しましょう。戸籍の附票とは、生まれてから現在までの住所遍歴が記載された証明書のことです。過去に住民登録した住所は漏れなく記載されていますので、最終兵器として使えます。
注意点は、住民票はお住いの市役所で請求できますが、戸籍の附票は本籍地でしか請求できないことです。
登記の所有者がすでに亡くなっている!?
農業をしていた親が亡くなり、子が農地を相続したものの、農業には従事せず売却するために農地転用をすることがあります。
前述の通り、登記は義務ではありませんので、相続登記をしていないと、亡くなった親の名前が所有者として残ってしまいます。しかし、法律では亡くなった時点で土地は相続人に引き継がれることになりますので、登記では真の所有者を証明できなくなってしまいます。
この場合、相続登記をして登記を変更した後にしか農地転用できないのでしょうか?
そんなことはありません。何度も申し上げますが、登記は義務ではないのです。義務ではないものを事実上義務付けるようなことは行政もしません。この場合、遺言または遺産分割協議書の写しを添付することになります。
遺言や遺産分割協議書には財産の分割方法が記載されているはずです。したがって、該当する農地を相続した者が新所有者であることが証明されます。
双方申請であっても単独申請が可能な場合もある
3条や5条の場合は原則として当事者双方が申請人となりますが、単独で申請が可能になる場合もあります。
以下の場合、例外的に単独申請が可能です。
- 強制競売・担保権の執行としての競売
- 公売
- 遺贈
- 判決の確定
- 裁判上の和解
- 請求の認諾
- 民事調停の成立
- 家事審判・家事調停の成立 など