相続が発生すると、様々な相続手続きをしなければなりません。その1つに被相続人が預貯金の解約や名義変更の手続きがあります。
農家の場合、JAバンクの口座をお持ちの方が多いのではないかと思います。今回は、私が実際に行ったJAバンクの名義変更手続きの流れをご紹介したいと思います。なお、今回の事案は相続人間の遺産分割協議後に手続きを行いました。
相続人以外が手続きを行うための委任状はこちらで確認できます。
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JAバンクの相続手続きで使える委任状の書き方
※JAは市町村単位で存在していますが、私が名義変更を行ったのはJA愛知西の手続きです。全国のJAが同じ手続きを採用しているかどうかは保証できませんのであらかじめご了承ください。
JAバンク(愛知西)名義変更の流れ
JAバンクの名義変更の流れは次の通りです。
- 口座の凍結
- 残高証明書の請求
- 名義変更の請求
1.口座の凍結
人が死亡した時点から相続は発生します。預貯金の名義変更手続きにおいて1番最初にすべきことは、まず口座を凍結することです。
被相続人の預貯金は相続財産として保存されるべきものですから、不正な引落しなどが行われないようにするためです。
口座が凍結されると、完全に出入金ができなくなります。公共料金などの定期的な口座振替がある場合には、引落し先の変更手続きをしておかなくてはなりません。
JAバンクでは「死亡届」という書類の提出によって口座の凍結が開始されます。死亡届の提出は代表相続人もしくは代理人が行うことができます。代理人の場合は委任状が必要で、書式は任意です。
必要書類
死亡届で必要な書類は以下の通りです。
- 死亡届
- 被相続人の除籍謄本
- 届出をする代表相続人の戸籍謄本
- 委任状(代理人の場合)
- 代表相続人の印鑑証明書(代理人の場合、発行から3ヶ月以内のもの)
委任状には実印で押印してもらい、印鑑証明書を持っていきましょう。
死亡届を提出しなくても口座を凍結できる!?
地方のJAでは地域との結びつきが強く、窓口の職員と顔見知りの方もいらっしゃいます。このような場合、口頭で死亡の事実を伝えればすぐに口座の凍結をしてくれることもあるようです。
2.残高証明書の請求
繰り返しになりますが、人が死亡した時点で相続が発生します。つまり預貯金においては、死亡した時点の残高が相続財産ということになります。
注意すべきことは、通帳に記入された金額は必ずしも相続財産の金額とは一致しないということです。しばらく記帳していなかったり、相続が発生してから誰かが引落しや入金をしている可能性があるからです。
相続財産である残高を間違えると、後々トラブルに発展するリスクがあります。そこで、金融機関から残高証明書を取り寄せ、死亡時の残高を明確にする必要があります。
JAバンクでは、「相続貯金等残高証明依頼書」という書類を提出して残高証明書を請求します。相続貯金等残高証明依頼書は、代表相続人または代理人が請求することができます。代理人は委任状が必要で、書式は任意です。
残高証明書は即日交付はされません。1週間後くらいに郵送で送られてきます。
必要書類
残高証明書の請求に必要な書類は以下の通りです。
- 相続貯金等残高証明依頼書
- 被相続人の除籍謄本
- 代表相続人の戸籍謄本
- 代表相続人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 委任状(代理人の場合)
- 代理人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
依頼書には代表相続人の実印が必要ですので、印鑑証明書も添付しなければなりません。代理人の場合は代理人の印鑑証明書も必要であることに注意してください。
なお、遺言執行者や財産管理人が選任されているときは、別途添付書類があります。
被相続人の出生から死亡するまでの戸籍を集めておく
添付書類として被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は求められていません。しかし、他の相続手続きで必ず必要となるものですから、1回でまとめて取り寄せておくと手間が省けます。
名義変更の請求
口座を凍結し、残高を確認したらいよいよ名義変更の請求です。
JAバンクでは、「相続手続依頼書」という書類を提出して行います。この書類には、相続人全員の署名と実印が必要になります。
この手続きでは、残高の振り分けを指定しなければなりませんので、相続人の間でどのように分割をするか、あらかじめ決めておきましょう。
こちらも即日に手続きが完了するわけではありません。名義変更の場合、依頼書を提出してから1週間後くらいに新しい通帳が郵送で送られてきます。
もちろん、名義変更ではなく口座を解約し、貯金の払戻しを選択することも可能です。
必要書類
相続手続依頼書に必要な書類は次の通りです。
- 相続手続依頼書
- 遺産分割協議書
- 被相続人の通帳およびキャッシュカード
- 新名義人の銀行印
残高証明書を請求した時点で、被相続人と相続人の戸籍関係は提出していますので、改めて提出する必要はありません。
私の場合、相続人が被相続人の銀行印をそのまま使用したいとのことでしたので、新名義人の銀行印は不要でした。
被相続人の通帳は一旦返却しますが、後日、使えないように処理された状態で新しい通帳とともに郵送されてきます。
今回は、遺産分割協議に後に名義変更手続きを行っていますので遺産分割協議書の提出が必要ですが、遺言がある場合や裁判によって分割が行われる場合には別途添付書類が必要です。
なお、この相続手続依頼書には、代理人に委任するための書式が含まれていますので、別途委任状は不要です。
遺産分割前でも名義変更は可能
遺産の分割方法が書面によって証明できなくても、金融機関の名義変更や払戻はできるようになっています。
そもそも遺産分割は口頭であっても有効であり、期限も決められていません。
金融機関の本音としては、分割が確定した書面の提示を求めたいところだと思いますが、柔軟な対応をしてくれています。
被相続人の通帳とキャッシュカードが見つからない場合はどうなる?
たとえ被相続人の通帳やキャッシュカードが見つからなくても名義変更や払戻しはできるようになっています。
通帳などは貴重品ですので、誰にも分からない場所に管理している可能性があるからです。もし後から見つかった場合は、速やかに窓口に提出する必要があります。
まとめ
JAバンクの名義変更は他の金融機関に比べて早いという印象です。これは私の個人的な意見ですが、地域密着で利用者との距離が近く、信頼関係が築かれていることが原因ではないかと思います。
しかし、早いといっても手続き開始から1ヶ月程度はかかります。相続人が遠方に住んでいて郵送で書類のやり取りをしなければならない場合などはもっと時間がかかるものと思われます。
戸籍書類や印鑑証明書を複数取り寄せておくなどして、他の相続手続きと同時進行で手続きを進めるようにするのも良いかもしれません。
※JAは市町村単位で存在していますが、私が名義変更を行ったのはJA愛知西の手続きです。全国のJAが同じ手続きを採用しているかどうかは保証できませんのであらかじめご了承ください。
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金融機関の相続手続きは各金融機関において独自の手続き方法があり、大変面倒だと思います。お困りの方はどうぞお気軽にお問い合わせください。