農地を駐車場に使用する場合も農地転用に該当しますので、許可または届出が必要になります。
届出(市街化区域内)の場合は、基本的に理由書は必要ないと思いますが、許可(市街化調整区域内)ですと、各自治体によって取扱いは異なりますが、ほぼ間違いなく理由書が必要になります。
駐車場は住宅とは違い、造成が伴っても開発行為に該当しません。したがって、都市計画法の規制はありませんので農地法を意識して理由書を書きます。
開発行為についてはこちらをご覧ください。
今回は、駐車場のための農地転用許可で実際に作成し、提出した理由書をご紹介します。
記入例 介護施設用駐車場の増設
今回の事例は、介護施設用の駐車場増設のケースです。
介護施設を運営する社会福祉法人の理事の親が施設に隣接する農地を所有していたので、その農地を駐車場として利用するための申請でした。
超高齢社会と呼ばれる時代になった今、利用者の数は年々増加傾向にあり、今後もますます需要が高まってくる事は疑いのない事実であると考えております。
当施設でも、開業当初は16名の従業員でスタートしましたが、利用者様の増加により4名増員し、現在は20名の従業員で運営を行っております。
それにより、利用者様1人当りの従業員の割合を低下させることなく、良質なサービスを提供できていると自負しております。しかし、唯一、駐車場の問題を抱えることとなってしまいました。
当施設では、駐車場が10台分しかない状態で、そのうち3台分しか来客用として確保することが出来ておりません。
送迎で込み合う朝や夕方の時間帯には、待ち時間が発生したりして、利用者の方々にご迷惑をお掛けする事態がしばしば起こっております。
又、車通勤希望でありながら停めることが出来ない従業員には、止むを得ず電車や自転車での通勤をお願いしている状況です。
この状況を一挙に解決するためには、新たに駐車場を設置することが最善であると考え、駐車場設置計画を立てることとなりました。
駐車場を設置するにあたり、申請地所有者が当法人の理事である私の親であり、耕作していない土地でもあった事から、すんなりと借り受ける承諾を得ることができ、申請地として選定しました。
申請地は周辺農地への影響も少なく、当事業所にも隣接している事から、駐車場として利用するには最適であると考えております。
以上の事をご理解頂き、処理して頂きます様、よろしくお願い申し上げます。
ポイント① 駐車場が足りなくて困っている状況を書く
農地転用は必要最低限でなければなりません。したがって、現実に駐車スペースが足りなくて困っている状況でなければ許可は受けることができません。まずは駐車場が足りないことでどんな弊害が発生しているのかを書きましょう。
記入例では、来客用が少なく混雑時には待ち時間が発生してしまうことが記載されています。一時的とはいえ、路上駐車の発生は交通安全上よろしくありません。
さらに、駐車場不足によって、職員に車通勤を我慢してもらっていることを挙げています。介護職員の待遇改善は、もはや当事者だけの問題ではなく社会全体の課題となっています。駐車場増設の理由として十分通用するでしょう。
なお、申請には駐車場を使用する者の車検証コピーを添付する必要があります。したがって、必要以上に広いスペースが欲しいからと言って、書面上だけ駐車台数を水増しするなどの不正行為はできません。
ポイント② 土地の選定理由を書く
次に、なぜその土地を選んだのかを書きましょう。
今回のケースでは、施設に隣接していること、所有者が身内であること、さらに非耕作地であったことが記載されています。
行政からすると、耕作されている土地よりも非耕作地の方が農業へのダメージは少ないですし、周辺農地への影響も最小限にできますので、農地転用に適した土地であるといえるでしょう。
土地の選定で注意すべき点は、利用者から遠すぎないことです。あまりに遠すぎると、実用性が疑われますので、隣接地や道路の向かい側を選定するのがベストでしょう。
なお、選定した土地が広すぎる場合、分筆を求められる可能性もありますのでご注意ください。
ポイント③ 申請地が駐車場として最適であることを念押しする
農地法では立地基準という許可基準があり、農地の区分にもよりますが、他の土地では目的を達成できない場合に例外的に許可されるとされています。
「ここしかない!」ということをもう一度アピールしておきましょう。
立地基準についてはこちらをご覧ください。
まとめ
いかかでしょうか?
前述のとおり、必要以上の土地を駐車場にすることはできませんが、逆に言えば必要であることが明確であれば、許可を受けることは難しくないといえます。ただ、車検証のコピーを提出するなどの根拠が必要になりますので不正行為はやめましょう。すぐバレます。
ぜひ参考にしてみてください。