農地法改正により、令和5年4月1日から農地法の基準が一部緩和され、非農家でも農地を所有できる方法が増えました。
最近、脱サラをして農業をはじめてみたいと考える人が増えてきているようです。
農地を取得(売買や貸し借り)するには、原則として農地法3条許可が必要です。そして、3条許可を受けるためにはいくつかの条件を満たさなければなりません。その条件の中には次のような条件が含まれています。
農地法3条2項
- 効率的に利用して耕作等の事業を行うと認められること(1号)
- 耕作等の事業に必要な農作業に常時従事すると認められること(4号)
原則として農地を取得する者は、少なくとも上記の条件を満たさなければ3条許可を受けることはできません。つまり、農業をしない者は農地を取得することができないということを表しています。
しかし、例外的に非農家でも農地を取得できる方法があります。厳密に言うと、方法としてはいくつかありますが、今回は私たちに身近に起こり得る3つの方法をご紹介します。
①相続による農地取得
相続とは、死亡した者の財産を相続人に承継させる制度のことです。相続について民法では次のように定めています。
民法896条「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」
つまり、農地も財産の1つですから、亡くなった者が農地を所有していた場合、農地は相続人へと承継されることになります。
相続は、死亡の事実によって自動的に発生するものと考えられています。したがって、この場合は3条許可は必要ありません。
例えば、農地を所有する親が亡くなり、農家ではない相続人(サラリーマンの息子など)は3条許可なく農地を取得することになります。
相続による農地取得は最も簡単な方法といえますが、その性質上、相続人だけが対象であること、そして農地を必要としない相続人も承継の対象となりますので、その点は注意が必要です。
②遺贈による農地取得
遺贈とは、死亡した者が遺言によって財産の一部または全部を無償で他人に与えることです。遺贈には包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。
相続と似ていますが、遺贈は遺言が残されていないと不可能であること、相続人以外の第三者もその対象となる点で大きく異なっています。
非農家でも農地を取得できるのは、遺贈の中でも「包括遺贈または相続人に対する特定遺贈」の場合のみです。
包括遺贈とは
包括遺贈とは、財産の全部または全部に対する割合を示して与える遺贈のことです。
包括遺贈の例
- 「全財産を愛人Aに遺贈する」
- 「全財産の2分の1を友人Bに遺贈する」
※あくまで全財産に対する割合であることに注意
農地を所有していた者が遺言を残し、上記のように書かれていた場合には愛人A、友人Bは3条許可は必要ありません。よって、愛人A、友人Bは非農家であっても農地を取得することができます。
特定遺贈とは
特定遺贈とは、全財産のうち特定の財産を指定して与える遺贈のことです。
特定遺贈の例
- 「農地Xを愛人Aに遺贈する」
- 「農地Zを長男Cに遺贈する」
ここで注意すべきことは、非農家が農地を取得できるのは、相続人に対する特定遺贈である点です。
つまり、上記の例の場合、2の長男Cは相続人ですので3条許可は必要ありません。したがって長男Cは非農家でも農地Zを取得することができます。
しかし、1の愛人Aは相続人ではありませんので相続人に対する特定遺贈に該当しません。したがって3条許可が必要になります。しかし、愛人Aが非農家ですと3条許可の条件を満たすことができないので農地Xを取得できないことになります。
③時効取得による農地の取得
あまり現実的ではないかもしれませんが、一定の期間、所有の意思をもって平穏かつ公然と農地を占有すると、時効によって非農家でも農地を取得することがあります。
時効取得についてはこちらの記事をお読みください。
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農地の時効取得
3条許可は不要でも3条届出が必要!
これまで、非農家が農地を取得できる3つの方法をご紹介しましたが、その共通点は、農地法3条許可を必要としないという点です。
しかし、上記のような方法で農地を取得した場合であっても、農地法3条の3に定められた届出をしなけれなならないことになっています。
この届出は、行政が農地の権利関係を適切に把握しておくために必要な手続きです。農業委員会は農地の取得について把握していませんので、農地を取得した者が自主的に申告するという形になります。忘れずに行っておきましょう。
農地法3条届出についてはこちらの記事をご覧ください。
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農地法3条届出