農地所有適格法人(旧農業生産法人)とは、法人として農業を行う農業法人のうち、特に農地の権利取得(買う・借りる)を行うことができる法人で、農地法第2条第3項に掲げられた要件を満たす法人のことです。
ここでは、法人をシンプルに「会社」と解釈してもらってOKです。
農地所有適格法人(旧農業生産法人)の特徴
農地所有適格法人(旧農業生産法人)だけが農地を所有することができる
法人とは、人の集まりである組織(会社等)に、法律によって特別に人格を与えられたものです。つまり、組織(会社等)=「人」として扱いましょうということです。
法人になることによって法人は、人と同じように物や権利を取得したり、損害賠償などの請求を法人としてすることができるようになります。法人化することで「法人名義で~する。」ということが可能になるわけです。例えば、法人化すると法人名義で銀行口座を開くことができるようになります。
では、法人であれば人と同じように農地の所有者となることも可能であるはずです。しかし、農地に関しては、すべての法人が自由に農地を売買したり賃貸することはできません。これは、農地法による規制のためです。
農地法は、「農地所有適格法人(旧農業生産法人)以外の法人は、農地または採草放牧地について所有権の移転や賃借権などの権利を取得することができない。」と定めています。
これにより、農地所有適格法人(旧農業生産法人)以外の法人は、法律によって人格を与えられたとしても農地を所有することができないことになります。
農地所有適格法人(旧農業生産法人)となるための特別な要件
農地所有適格法人となるためには、主に次のような要件を満たさなければなりません。
- 組織形態要件
- 事業要件
- 構成員要件
- 業務執行役員要件
これらの要件をすべて満たさなければ、農地所有適格法人となることはできません。法人として農業を継続的に続けていくことを担保するために厳しい制限が設けられています。
なぜ農地所有適格法人(旧農業生産法人)だけが認められるのか?
では、なぜ農地所有適格法人だけが農地を所有することができ、その他の法人はできないのでしょうか?
本来、会社の1番の目的とは、「利益を上げること」です。出資者から資金を集め、それを元手に事業行い利益を上げ、出資者に還元するのが会社の役目です。
逆に言うと、利益が上がらない事業からは撤退するということになります。また、最悪の場合、倒産してしまうこともあり得ます。
このことから、継続的に営農していくことが期待される農地を、営利目的の会社が簡単に所有できることに不安があるのです。
そこで、一定の要件を満たした特別な法人だけに農地の権利取得が認められています。それが農地所有適格法人です。
農地所有適格法人(旧農業生産法人)以外の法人も農地を借りることができるようになった!?
平成21年の農地法改正により、農地所有適格法人以外の法人も農地を賃借(賃貸借・使用貸借)することができるようになりました。これにより、農地所有適格法人でなくても農地を入手して営農することができるようになりました。この改正により、法人が農業に参入しやすくなったといえます。
しかし、あくまで賃借することができるようになったに過ぎず、農地所有適格法人のように農地を「所有」することはできません。